Ulmv Uzih

1章

贈り物



 Ulmv Uzihは明らかにツイていた。
 追ってを目にした時に、他に二人の妹達と一緒だったこと、それに、仕事が簡単に見つかったことだろう。
 極めて小柄なUlmv Uzihではあったが、力は姉妹の中ではずば抜けていた。そのお陰で仕事も簡単に見つかった。
 仕事はハンターズ相手のお店の手伝いであった。商品の整理等で、意外に力仕事が多かったためと、必至に頭を下げたのが功を奏して即日仕事が決まった。
 姉・・・と呼んでいるFoneFars、そして、一番下の妹とはぐれてから、もうかなりの時が経っている。二人とも、無事なのだろうか?
 一番心配なのは一番上の姉のFoneFarsだった。確かに、年齢的には一番上だし、多くのことをそれなりにこなせるはずなので、普通なら心配ないはずだ。あくまでも、普通ならの話である。
 要するに、問題のは、少なくともまともとは言えない感じなのだ。どこか、思考回路が変なのに違いない・・・常々そう思ってきた。
 ただ、そのの身体能力、殊に戦闘能力に関しては極めて高いので、組織に捕まる心配だけはしていなかった。そういう意味では、一番下の妹が心配であった。
 ただ、毎日はそんなことを考えている暇がほとんど無い程忙しかった。仕事が・・・ではない。一緒にいる、二人の妹達の悪戯を見張るのに・・・であった。
 今日も、いつもと同じように、煩雑な一日で終わるはずだった。
 あの様な訪問さえなければ・・・である。

II

「誰かしら?」
 不意の訪問者だった。
 そもそも、彼女達に訪問者があること自身、珍しいことであった。
「どなたですか?」
 そう言いながら扉を開けたUlmvUzihの前には、小柄な男性が立っていた。
「えっと・・・Ul・・・と、ごめんなさい。読み方習ってこなかったもので。・・・こちらの方ですよね?」
 男性が見せてよこした端末には、確かにUlmvUzihの名前が記されていた。
「確かに、私ですけれども・・・」
 何故彼は私の名前を知っていたのだろうか?何故に、私を訪ねてきたのっだろうか?警戒を解いてはいけない。風貌は何処も怪しくは無い。それでもだ・・・。
「FoneFarsさんからのお届けものをお持ちしましたので、こちらにサインと照合をお願いします。」
 Fone姉さんから?意外な名前が出た。それゆえに、UlmvUzihは余計に戸惑った。信じていいのか?それとも、警戒を深めるべきか?
 要求された動作をしつつ、UlmvUzihは口を開いた
「Fone姉さん、今どうしてますか?」
 相手の反応を見るにはうってつけの質問だと思った。
「ちょっと、大事な用事で外せないそうで。あ、メッセージも預かってきてますので。」
 返答と共に渡されたメッセージプレートを受け取りながら、UlmvUzihはなおも質問をぶつけた。
「姉さんは今、何やってるんですか?」
 この質問には、彼も驚いたようだった。彼も知らないのだろうか?
「あれ、知らないんですか?Foneさんはハンターズに入って働いてますけど・・・?あれ?」
 驚きだった。
 何をやらかすか分からないではあったが、よもや、その様なことを始めていようとは思いも寄らなかった。
「じゃあ、僕はこれで失礼するよ。」
 呆然としているUlmvUzihをよそに立ち去ろうとする男に、彼女は慌てて感謝の言葉を述べた後、扉を閉めた。

「ねぇねぇ、何だったの?うるるん姉ぇ?」
 来客を遠巻きに見ていた下から2番目の妹Neoが、長姉FoneFarsからの届け物にいたく興味を持ったようで、しきりに中身を見たがっていた。彼女はUlmvUzihのことを『うるるん姉ぇ』と呼ぶ。「恥ずかしいからやめなさい!」と何度となく言ったが、何の効果も無く今に至っている。
「Fone姉さんから、手紙と届け物みたい・・・」
 ひょこひょこと飛び跳ねて、UlmvUzihの手からメッセージプレートを奪おうとしているNeoを手で制しながら、UlmvUzihは問題のメッセージに目を走らせた。
「Fone姉様からですか?姉さま、元気でしょうか?」
 姉妹の真ん中、Neoの姉であり、UlmvUzihの妹、アンドロイドのFarsEternalが、しきりに邪魔をするNeoを抑えてくれたお陰で、何とか読みやすくなった。
「メッセージには何と?」
 FarsEternalの質問に、UlmvUzihはメッセージに視線を落としながら答えた。
「追手がいるらしいわ・・・」
 UlmvUzihの返答と、本日二人目の来訪者を伝える呼び鈴がなったのは殆ど同時であった。

III

「ドアの修理費、弁償してもらうわよ!」
 呼び鈴を鳴らした主は、扉が中々開かなかったことから、実力行使に出た。
 扉を破壊した主は、大柄だった。少なくとも、小柄なUlmvUzihの1.5倍はありそうな感じであった。全身黒で統一した衣装は、髪の毛まで白いUlmvUzihとは対称的であった。
 真紅の前髪から見え隠れするその瞳は鋭く光っていた。そこに宿っていたのは・・・殺気だろうか?
「用件は・・・分かってるみたいね。おとなしく良い子にしてれば、痛い目ににあわなくてよ。でもね、おいたをする子なら・・・分かってるわよね?」
 血を連想させるような色をした口唇から紡ぎだされる言葉には、何の温かみも感じなかった。低めの女性の声が成せる業か、はたまた、彼女自身の感情そのものが乗り移っているのか、声のもつ異様な迫力がUlmvUzih達の身体を萎縮させた。
 黒一色の女性はゆっくりとUlmvUzihたちとの距離を詰めてくる。その動きから目を離さないようにしながら、UlmvUzihは囁いた。
「Eternal・・・スキャンモードを開始して・・・」
 そう言うが速いか、UlmvUzihは一気に不法侵入者の懐まで入り込んだ。
「ねぇ?・・・身体が小さい方が、ケンカには向いてると思わない?」
「くっ・・・」
 乱入者が先程まで浮かべていた余裕の表情は、憤怒へと変わり、顔一面に広がっていくその最中、UlmvUzihの右拳が顔面めがけて放たれた。
「!?」
 紙一重のところでUlmvUzihの攻撃を交わした侵入者は、突き出されたUlmvUzihの腕へと自らの腕を絡めていった。
(腕を極めようとしてくる?なら・・・!)
 右腕を相手に捉えられる瞬間であった。相手のしてやったりという笑みを横目に、UlmvUzihの蹴りが相手の腹部を直撃した。
「出マシタ。右脇腹ニ裂傷ノ痕跡アリデス。」
 先程までとは違い、妙に機械地味たFarsEternalの声を受けて、UlmvUzihの身体が再び軽やかに動き出した。
「!!!!!!」
 次の瞬間にはUlmvUzihの左手はの右脇腹にめり込んでいた。
 何か生温かいものが左手の先に触れるのを感じ・・・ふと視線をそちらに下ろす・・・。染み?黒い衣装に徐々に広がる生温かい染み・・・。
「え・・・!?」
 一瞬だった。ほんの一瞬、意識を侵入者から解いたはずみに、侵入者は壊れた扉の所まで後退していた。
「全く・・・話が違う・・・こっちにいるヤツラは武器さえなければ戦闘力は無いって話じゃ・・・」
 侵入者は、UlmvUzihの顔をキッと睨みつけた。
「覚えときな・・・次はこうはいかないから・・・」
 捨て台詞が終わるか終わらないかの微妙なところで、侵入者の姿は消えていた。
「いまのおばちゃん・・・誰?」
 テーブルの影から姿を覗かせたNeoがボソッと言い放った。この妹が身を滅ぼすとしたら、その口の悪さが災いするのに違いない・・・UlmvUzihが常々思ってきたことだ。

IV

「武器・・・ですね・・・」
 長姉Foneからの贈り物は多量の武器、幾ばくかのお金、薬、それに、奇妙な物体だった。
「ねぇねぇねぇねぇ!この変なのなぁ〜〜〜にぃ〜〜〜?」
 Neoは、その奇妙な物体を手にしてテーブルの周りをグルグルと走り回っていた。Neoのすぐ上の姉に当たるFarsEternalのボディ色と同じで、水色を基本色とした服装を着ているから、できるとしたら、いかにも食欲を削いでくれるような鮮やかな水色のバターができるのだろう。
「Neo・・・そんなに騒いでると・・・」
 FarsEternalの言葉が終わらないうちに、Neoの頭にげん骨が降り注いだ。拳の主は、勿論UlmvUzihであった。
「いったぁ〜〜〜ひどいなぁ〜〜〜〜何もぶ・・・!#」
 問答無用とばかりに、2撃目がNeoの頭部を襲った。
 Neoが頭部を両手でおさえてるおかげで床に転がることとなったそれを拾い上げ、UlmvUzihはFarsEternalの方に向き直った。
「で?これは結局何?」
 かすかに動いている。それに、ほんのりと温かい。生物だろうか?
「どうやら、マグと呼称される、ハンターズの一員に支給される生体防具らしいです。」
「生体防具・・・なるほどね・・・」
 なるほど。それなら動くのも、温かいのも納得がいく。
「武器に防具・・・Fone姉さんは、『これらを使って身を護れ!』って言いたいのね・・・」
 送られてきた武器は、確かに3人の特徴をおさえている。3人が扱い易いものを用意してくれたようだ。・・・だが、合点が行かない点もある。ならなぜ・・・
「ねぇ、だったら何で、Fone姉ぇが直接こなかったの?あたしだって、エタ姉ぇだって、もちろんうるるん姉ぇだってFone姉ぇと会いたいのに・・・Fone姉ぇ、会いたくないのかなぁ・・・?」
 そうなのだ・・・Neoの行った通り、何故、Fone自らやってこなかったのか?Foneの性格なら、自分でやってきそうなものだが・・・他人まで使って身を守る術を送ってよこした理由は一体?信じられる仲間ができたから、他人に任せた・・・そうとも思えるのだが・・・。
「ところで、Fone姉様はどちらで私達の居場所を知ったのでしょうか?」
 FarsEternalの口にした疑問も気になる。他の知識ならいざ知らず、情報収集をすることに関しては、姉妹の中で最も不得手だったはずだ。ネットを使って何てことはまず考えられない。離れ離れになってしまってからかなりの時が経つとは言え、そこまで上達するはずがない。それだけは確実に自信がある。それが分かってるからこそ、Eternalも疑問に思ったはずだ。
「さっきのおばさんって、やっぱりあたし達を捕まえに来たのかなぁ〜〜〜?」
 おもちゃを取り上げられて、不満の捌け口を探していたNeoは、先程の不法侵入者に射程をあわせたようだ。妙に、『おばさん』というフレーズを強調している。
 常識的に考えれば、先程のが件の追手なのだろう。口にした言葉からもそれと伺えるものがあった。
「先程の人・・・かなり深手を負っていたみたいですね・・・」
 追手と思われる相手が深手を負っていた・・・組織内での抗争?勿論、その可能性もあるが・・・Foneと一戦交えたのではないだろうか?だから・・・
「あのおばさん、きっとFone姉ぇに痛い目にあわされたんだぁ〜〜♪」
「だから、Fone姉様は追手がいることを知ることができた・・・」
 妙に嬉しそうなNeoの言葉を補足するように、Eternalが続けた。確かに・・・つじつまは合う。
「ということは、Fone姉さんはアイツから私達の居場所を知ったって考えるのが普通よね・・・」
 では、何故、は直接来なかったのか?多少間が抜けてるとは言え、用心深い性格だ。こういうことは他人に任せずに、自分で処理したがる性分筈だ。
「あのFone姉様が、他人に任せた・・・いえ、他人に任せざるをえなかった理由は一体なんでしょう?」
 あの姉をして他人に任せるより他が無かった理由とは?
「まさか・・・ですが、余りにも酷い痛手を受けたとか・・・」
 もしくは・・・
「余程手が離せない何かがあったのか・・・」
 Fone姉さんが手が離せないと判断したもの・・・それは・・・
「Etrnal、Neo、今すぐに情報拾いにいってもらえる?内容は・・・」
「分かってます。直ちに・・・」


「・・・ラグオルの洞窟エリア・・・情報ソースの信頼度は・・・最高ランクね。」
 どうやら、この為のようだ。一番下の妹が何者かに捕まっている。それも、明日には追手に引き渡される・・・
「Fone姉様はこの情報を手に入れたんでしょうね・・・だから、こちらにはいらっしゃらないですぐに救出に向かわれた・・・。」
 Foneなら心配はない。きっと助けてくれるだろう。UlmvUzihはそう確信していた。ただ、万が一、怪我をしていて動けないとしたら・・・そうであったとしたら・・・。
 自分も助けに行きたい・・・そう思いながらも、UlmvUzihにはその術が無い・・・。得物はある。Fone姉さんが送ってくれたものが。・・・だが、一般市民がラグオルに降りることはまだ許可されていない。許可されているのは総督府関係の者・各種軍隊・ハンターズくらいだという・・・。
「助けにいけますよ。」
 歯痒そうな表情を浮かべていたUlmvUzihに対して、いかにもあっさりとEternalは言ってのけた。表情も、至って普通だ。否、イタズラを企んでる時のような笑みを隠してる。隠して普通を装っている・・・そういう顔だ。
「先程、ついでにハンターズの偽造IDを作成しておきました。先程のマグと呼ばれる生体防具を身につけていれば問題なくラグオルまで行けるかと・・・。あ、さらについでに、扉の修理も依頼しておきましたので。」
 開いた口が塞がらないとはこのことだ。やはり、この二人の妹達を野放しにしたら何をやらかすことやら・・・。だが、今回ばかりはそれに助けられたようだ。
「最短ルート・・・わかる?」
 UlmvUzihの問いに、待ってましたとばかりに、Neoが答えた。
「細工はりゅ〜りゅ〜、仕上げを〜〜〜ってね♪うるるん姉ぇがそういうと思って、調べといたよぉ〜〜♪」
 Neoはそう言いながら、携帯用端末を放ってよこした。
「それに、偽造ID等も入力されています。なお、マグによって生体能力の上昇があるそうですので、多少扱え無さそうと感じる武器でももっていかれたほうがよろしいかと。」
「O.K.分かったわ・・・じゃぁ、これ、これ・・・これに、これ・・・っと!」
 Eternalの忠告を元に、複数の接近戦用武器とマグを手にし、UlmvUzihは、壊れて開けっ放しと化した扉へ向かった。
「じゃぁ、留守番と扉の修理の件、頼んだわよ。」
 そう言い残し、UlmvUzihは駆け出した・・・。

 

 

続く

思い出す

(C) SEGA / SONICTEAM, 2000.
(C) SONICTEAM / SEGA, 2000, 2001.



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