Fone Fars

序章

逃げ出して・・・



「あの子達・・・無事かしら・・・」
 パイオニア2へと乗船する直前に、遠目に見た追っ手の姿。
「慌てたのは間違いだったのね・・・」
 向こうは明らかに気がついていなかったはずだ・・・。慌てる必要などなかった。やっと逃げ切れる・・・そう思った矢先に現れた追っ手の姿。否が応でも恐怖を抑えきることはできなかった。
 あれからかなりの時が経ったが、彼女の探している者たちは見つかっていない。もうすぐラグオルの衛星軌道上に到着するはず・・・。
 ラグオルへの入植が始まってしまえば探すのも余計に手間取ってしまう・・・出発時とは全く異なる焦りが、彼女の中で日に日に広がっていった。
「今の所、追っ手に遭ったことは無いから、捕まった・・・ってことはないと思うけど・・・。」
 手がかりは無かった。誰かに依頼したくとも、先立つものが無かった。ハンターズに所属することは、手がかり・収入のどちらを得るのにも都合が良いように思えた。何よりも、自らの技能が生かせそうだった。・・・尤も、未だに大した仕事をしたことは無いのだが・・・。
 もうすぐラグオルに到着する・・・少しは仕事があるかもしれない・・・。

II

「調査・・・ですか?」
 今朝から何人ものハンター達が総督の部屋に呼ばれていた。彼女に呼び出しがかかったのは、喫茶店で、紅茶を片手に首を傾げていた時であった。
「そうだ。君は優秀なフォースと聞いている。」
(優秀な・・・って、今までこなしたギルドの仕事は無駄使いの旦那を注意するとか・・・実力を測れるものなんて・・・)
「・・・君も知ってるように・・・」
(ギルドの模擬戦闘試験では、確かにそれなりの成績を残してるけど・・・)
 総督の言葉など上の空に、彼女はパイオニア2に乗り込んでからのことを考えていた。まだ、探し人達の行方は知れない・・・。
「・・・詳しい話は秘書のアイリーンに聞いてくれ。」
 何やら、落ち着かない様子の総督であったが、その理由は秘書の話を聞いてすぐに理解ができた。どうやら、総督の娘が先のパイオニア1に乗船していたらしく、その彼女も例外なく行方が知れないらしい・・・。
 得られるだけの情報を得て、彼女(FoneFars)は総督の部屋を後にした。

III

 現在、彼女が所有しているものは、政府より支給されたフォース用の初級武器であるケイン(杖)と、簡易的に身を護ってくれるフレームという鎧、仕事を請け負ったことに対しての『手付』とばかりに与えられたいくばくかのお金。そして、ハンターズに入った時に、『証』として渡された『マグ』と呼ばれる生体防具・・・これが彼女の持つ全てであった。
 武器と防具が予め支給されたと言うことから、何らかの危険は想定して行かなくてはならないのだろう。もっとも、支給されたモノが物であるだけに、それ程心配はしてはいなかった。
「すみません、ここがラグオルへの転送機ですか?」
 衛星軌道上に待機しているこの船から、ラグオルへと下りる道は一つ。トランスポーターと呼ばれる転送装置ただ一つ。
「ここは一般は立ち入り禁止だ。さっさとあっちへ行け!」
 トランスポーターへの入り口を固める軍人の一人が、しかめ面を更にゆがめて彼女に言い放った
「総督から依頼を受けたものですけど・・・」
 軍人の言い方にはかなりこみ上げてくるものがあったが、ここで言い争いをしても何の得にもならないことから多少弱めに出てみたのだが・・・
「名前と身分を保証するものを出しな・・・・ふん。ハンターズどもはピクニック気分で降りていくが・・・全く、いい身分だな。」
 短気故に、手が出そうになった瞬間であった。もう一人いた軍人が肩に手をかけてきた。
「彼の言動はあまり気にしないで下さい。根がまじめなのと、思ったことをすぐに口に出してしまう性格で・・・」
 思いも寄らぬ方向からの横槍と、もう一人の軍人の、余りにも穏やかな顔に、彼女の怒りは一足先に転送装置の手にかかってしまったようだった。
「いえ・・・余り気にしてませんので。」
 彼女は簡単にそう言い放って転送装置を作動させた。

IV

「うわぁ・・・気持ちい・・・」
 降り注ぐ日の光・・・済んだ空気・・・それに漂う緑の香り・・・足の下に確かに広がる土の感触・・・作り物ではない自然のそれ・・・彼女にとって、全てが初めての体験であった(草木がテラフォーミングにより生み出された人工的なものであったことを彼女は知らなかった)。
 遠くに見える白い建造物が調査の目的地、セントラルドーム。話に聞いている『爆発』が起きたとはとても思えない・・・。それは遠目に見ているからなのだろうか?・・・今はあそこまで行って見るしかなさそうだ。
「・・・?」
 銃声?かすかだが、それに似た音がした・・・。伊達に施設で強化されたわけではないその聴覚に飛び込んできた音。間違いなく銃声だ・・・。それに悲鳴・・・雄叫び・・・?何かが起きているらしい。
 彼女は、両手に自らの武器をきつく握り締め、両側に緑の広がる道を、先へと急いだ・・・。

 

 

続く

(C) SEGA / SONICTEAM, 2000.
(C) SONICTEAM / SEGA, 2000, 2001.



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